長野地方裁判所 昭和59年(行ウ)3号 判決 1990年5月24日
長野県須坂市田の神六番地六
三号事件原告
山岸ま
同市大字坂田八六番地
同
田中博子
青森県南津軽郡藤崎町村井三六番地五
同
原田由美子
長野県中野市三好町一丁目四番二七号
同
小淵三千惠
長野市篠ノ井二ツ柳中条明四四八番地新井アパート三号
同
新井邦子
同県須坂市田の神六番地六
同
山岸昭信
同市大字小河原字別府山道南沖二一五六番地
六号事件原告
昭信自動車工業株式会社
右代表者代表取締役
山岸昭信
同所
七号事件原告
昭信販売株式会社
右代表者代表取締役
山岸ま
右八名訴訟代理人弁護士
中西義徳
同
北村行夫
同
駒宮紀美
同
藤田徹
右中西義徳訴訟復代理人弁護士
坂井眞
同
澤本淳
同
下谷収
長野市西後町六〇八番地
右三事件被告
長野税務署長
藤木嘉壽
右指定代理人
齋藤隆
同
大池忠夫
同
松岡敬八郎
同
河原宏
同
小林勝
同
石和田一朗
同
保科正人
主文
一 原告らの請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は各事件につき各事件原告らの各負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
(三号事件)
一 三号事件原告ら
1 被告が山岸春夫(以下山岸姓の者は、再出以降、名のみで示す。)に対してした左記各処分(ただし、昭和四九年分ないし昭和五一年分については、昭和五八年一一月三〇日付審査請求に対する裁決により一部取り消された後の部分。以下「本件処分一」という。)は、いずれもこれを取り消す。
(一) 春夫の昭和四九年分所得税についてした、昭和五四年一一月三〇日付更正処分のうち総所得金額二三九六万八二一五円、納付すべき税額四四八万七八〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分
(二) 春夫の昭和五〇年分所得税についてした、昭和五四年一一月三〇日付更正処分のうち総所得金額二七三三万三五九〇円、納付すべき税額五四四万七六〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分
(三) 春夫の昭和五一年分所得税についてした、昭和五五年四月三〇日付再更正変更決定のうち総所得金額二五〇一万六三九六円、納付すべき税額三三〇万八三〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分
(四) 春夫の昭和五二年分所得税についてした、昭和五四年一一月三〇日付更正処分のうち総所得金額五五四八万七九九一円、納付すべき税額一〇六九万五二〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二 被告
主文同旨
(六号事件)
一 原告昭信自動車工業株式会社(以下「原告昭信自工」という。)
1 被告が原告昭信自工に対してした左記各処分(ただし、昭和五八年一一月三〇日付審査請求に対する裁決により一部取り消された事業年度については、取り消された後の部分。以下「本件処分二」という。)は、いずれもこれを取り消す。
(一) 原告昭信自工の昭和四七年三月一日から昭和四八年二月二八日までの事業年度(以下「四八年二月期」という。)の法人税についてした、昭和五三年四月二八日付更正処分のうち総所得金額八一八七万八一七七円、納付すべき税額二九九〇万〇五〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分
(二) 原告昭信自工の昭和四八年三月一日から昭和四九年二月二八日までの事業年度(以下「四九年二月期」という。)の法人税についてした、昭和五三年五月三一日付更正処分のうち総所得金額二億三五九五万二〇〇二円、納付すべき税額八八八七万四一〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分
(三) 原告昭信自工の昭和四九年三月一日から昭和五〇年二月二八日までの事業年度(以下「五〇年二月期」という。)の法人税についてした、昭和五三年五月三一日付更正処分のうち総所得金額三億八〇九二万一一八九円、納付すべき税額一億五五六三万〇五〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分
(四) 原告昭信自工の昭和五〇年三月一日から昭和五一年二月二〇日までの事業年度(以下「五一年二月期」という。)の法人税についてした、昭和五三年五月三一日付更正処分のうち総所得金額一億九一四五万〇四五九円、納付すべき税額七八七六万六九〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分
(五) 原告昭信自工の昭和五一年二月二一日から昭和五二年二月二〇日までの事業年度(以下「五二年二月期」という。)の法人税に対してした、昭和五三年五月三一日付更正処分のうち総所得金額五億二八二三万三七四〇円、納付すべき税額二億一五九一万四九〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分
(六) 昭和五三年五月三一日付でした原告昭信自工の昭和四九年一月から昭和五一年一〇月までの各月の源泉徴収にかかる所得税についての納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分〔ただし、原告昭信自工は、昭和五八年一一月三〇日付審査請求に対する裁決により一部取り消された事業年度については、取り消された後の部分の取り消しを求めるものであるから、右期間のうち全額を取り消された月については、これを含まないものと解する。〕
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二 被告
主文同旨
(七号事件)
一 原告昭信販売株式会社(以下「原告昭信販売」という。)
1 被告が、原告昭信販売に対してした昭和五三年五月三一日付左記各処分(ただし、昭和五八年一一月三〇日付審査請求に対する裁決により一部取り消された後の部分。以下「本件処分三」という。)は、いずれもこれを取り消す。
(一) 原告昭信販売の四九年二月期の法人税についてした更正処分のうち総所得金額八二二万六四〇九円、納付すべき税額二六七万〇三〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分
(二) 原告昭信販売の五〇年二月期の法人税についてした更正処分のうち総所得金額二四〇五万九八二四円、納付すべき税額八九〇万〇五〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分
(三) 原告昭信販売の五一年二月期の法人税についてした更正処分のうち総所得金額四二一万六二六〇円、納付すべき税額一一二万〇四〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分
(四) 原告昭信販売の五二年二月期の法人税についてした更正処分のうち総所得金額一二二五万五一九五円、納付すべき税額三八八万二五〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分
(五) 原告昭信販売の昭和四八年六月から昭和五二年二月まで及び同年五月の各月の源泉徴収にかかる所得税についての納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分〔ただし、原告昭信自工は、昭和五八年一一月三〇日付審査請求に対する裁決により一部取り消された事業年度については、取り消された後の部分の取り消しを求めるものであるから、右期間のうち全額を取り消された月については、これを含まないものと解する。〕
二 被告
主文同旨
第二当事者の主張
(三号事件)
一 原告ら・請求原因
1 本件処分一
(一) 春夫は、昭和四九年ないし昭和五二年(以下「本件係争年」という。)当時、原告昭信自工及び同昭信販売の代表取締役であつたが、本件係争年分の所得税について、別紙第一の一ないし四の各「確定申告欄」記載のとおり各確定申告し、昭和四九年分については、別紙第一の一の「修正申告」欄記載のとおり、修正申告したところ、被告は、別紙第一の一ないし四の各「更正賦課決定」欄記載のとおりの各更正処分をした。
(二) 春夫は、右各別紙の各「異議申立」欄記載のとおり、各異議を申立て、被告が国税通則法八九条の規定により審査請求として取り扱うことを適当と認めたので、昭和五五年五月二日、これに同意し、このため同日審査請求がなされたとみなされたが、右各更正処分は、右各別紙の各「右裁決」欄記載のとおり、その一部が取り消され、その余については棄却されて、その裁決書が昭和五八年一二月七日、春夫に送達された。なお、被告は、別紙第一の三の「再更正変更決定」欄記載のとおり、減額の再更正処分をしている。
2 春夫は、昭和五七年四月一二日、死亡し、原告山岸まが二分の一、同田中博子、同原田由美子、同小淵三千恵、同新井邦子及び同山岸昭信が各一〇分の一宛相続した。
3 本件処分一は、春夫が原告昭信自工及び原告昭信販売(以下「原告両社」という。)において、従業員持株制度を採用し、従業員に株式を取得させる方法として、従業員に賞与あるいは給与を特別に加算(以下「特別加算」という。)し、それを各従業員が取得する株式の代金に充当することとし、各従業員から原告昭信自工の株の売買代金として預かつていた金員を、被告において、原告両社からの春夫の賞与と誤認したり、従業員が横領した仕入代金を春夫が受領したと誤認して、それらを春夫の給与所得に計上すべきであると認定したこと等に基づいてなされた違法な処分である。
4 よつて、原告らは、被告に対し、本件処分一のうち、確定申告額あるいは修正申告がなされている場合には修正申告額を超える部分につき、取消しを求める。
二 被告・認否
1 請求原因1及び2の事実は認める。
2 同3の主張は争う。
三 被告・抗弁
1 本件処分一のうち、更正処分の適法性について
春夫の本件係争年分の所得税の総所得金額及び所得税額は次の通りである。
(一) 昭和四九年分
<省略>
右各項目のうち、給与所得金額は、春夫の給与収入金額四六五三万八五二六円から給与所得控除の額四二一万七六九七円を控除した金額であるが、右給与収入金額の内訳は次のとおりである。
(1) 原告昭信自工からの給与収入金額 三一七〇万五六三一円
右金額は、次に掲げる金額の合計額である。
ア 従業員賞与の特別加算額から受領した額 一六九〇万円
原告昭信自工が、昭和四九年一月一八日及び同年二月一二日に、従業員に対して通常の賞与のほかに株式取得分として特別加算した金額一九八九万円のうち、実際は従業員でなく、春夫が受領していた金額
イ 従業員給料の特別加算額から受領した金額 二四六万五〇〇〇円
原告昭信自工が、特定の従業員の給料に特別加算して損金経理した一二二〇万円のうち、「差引積立金」として従業員に支給されなかつた金額四八〇万一〇〇〇円のうち、春夫が受領した金額(八月一三日の一四六万五〇〇〇円と一二月三〇日の一〇〇万円の合計額)
ウ 車輛売却代金相当額の利得額 一八三万二八五一円
昭和四九年五月二日、原告昭信自工は、従業員森康宏らに車輛二台を一八三万二八五一円で売却したが、その売却代金を春夫が取得したため、同人が利益を享受することの確定した金額
エ 右以外の金額 一〇五〇万七七八〇円
春夫の確定申告
(2) 原告昭信販売からの給与収入金額 一四八三万二八九五円
右金額は、次に掲げる金額の合計額である。
ア 従業員給料の特別加算額から受領した金額 六三五万一九四〇円
原告昭信販売が給料の支給に当たり、特定の従業員に通常の給料のほかに特別加算し、損金経理した金額一一八六万三〇〇〇円のうち、従業員に支給されず春夫が受領していた次に掲げる控除金額の合計額
<省略>
イ 従業員賞与の特別加算額から受領した金額
原告昭信販売が従業員賞与の支給に当たり、従業員に通常の賞与のほかに特別加算した金額一二〇四万三二〇〇円のうち、従業員に支給されず春夫が受領していた次に掲げる金額
<省略>
ウ 仕入過大計上額から受領した金額 一九三万四〇〇〇円
原告昭信販売が亜細亜産業公社から噴霧機の仕入をした際に、実際の仕入額よりも過大に計上した一九三万四〇〇〇円を、昭和四九年九月二〇日春夫が取得した金額
(二) 昭和五〇年分
<省略>
右項目のうち、給与所得金額は、春夫の給与収入金額二七〇四万四八九九円から給与所得控除額三七五万四四九〇円を控除した金額であるが、右給与収入金額の内訳は次のとおりである。
(1) 原告昭信自工からの給与収入金額 一三六一万一六〇〇円
右金額は、次に掲げる金額の合計額である。
ア 従業員給料の特別加算額から受領した金額 二八六万五〇〇〇円
原告昭信自工が特定の従業員の給料に特別加算して損金経理した一四六四万円のうちの「差引積立金」として支給されなかつた金額五七四万八〇〇〇円のうち、春夫が受領した次に掲げる金額
<省略>
イ 右以外の金額 一〇七四万六六〇〇円
春夫の確定申告額
(2) 原告昭信販売からの給与収入金額 一三四三万三二九九円
右金額は、次に掲げる金額の合計額である。
ア 従業員給料の特別加算額から受領した金額 六二九万一八四〇円
原告昭信販売が給料の支給に当たり、特定の従業員らに通常の給料のほかに特別加算し損金経理した金額一一五二万円のうち、従業員に支給されず春夫が受領していた「控除金額」六二九万一八四〇円(四九年一月分から同年一二月分まで月額五二万四三二〇円の一二か月分合計額)
イ 従業員賞与の特別加算額から受領した金額 四二二万七九五七円
原告昭信販売が従業員賞与の支給に当たり、従業員に通常の賞与のほかに特別加算した金額八四四万五二〇〇円のうち、従業員に支給されず春夫が受領していた次に掲げる金額
<省略>
ウ 仕入過大計上額から受領した金額 二九一万三五〇〇円
原告昭信販売が亜細亜産業公社から噴霧器の仕入をした際に、実際の仕入額よりも過大に計上した二九一万三五〇〇円を、昭和五〇年三月二四日春夫が受領した金額
(三) 昭和五一年分
<省略>
<省略>
右項目のうち、給与所得金額は、春夫の給与収入金額二四六六万一〇一九円から給与所得控除額三五一万六一〇二円を控除した金額であるが、右給与収入金額の内訳は次のとおりである。
(1) 原告昭信自工からの給与収入金額 一五九四万六六〇〇円
右金額は、次の掲げる金額の合計額である。
ア 従業員給料の特別加算額から受領した金額 七五万円
原告昭信自工が特定の従業員の給料に特別加算して損金経理した一三四二万円のうちの「差引積立金」として従業員に支給されなかつた金額五〇五万九〇〇〇円のうち、春夫が受領した一月一二日の四〇万円と八月一三日の三五万円との合計額
イ 右以外の金額 一五一九万六六〇〇円
春夫の確定申告額
(2) 原告昭信販売からの給与収入金額 八七一万四四一九円
右金額は、次に掲げる金額の合計額である。
ア 従業員給料の特別加算額から受領した金額 六二〇万九四四〇円
原告昭信販売が給料の支給に当たり、特定の従業員に通常の給料のほかに特別加算して損金経理した金額一一三五万五〇〇〇円のうち、従業員に支給されず春夫が受領していた次に掲げる控除金額の合計額
<省略>
イ 従業員賞与の特別加算額から受領した金額 二五〇万四九七九円
原告昭信販売が賞与の支給に当たり、従業員に通常の賞与のほかに特別加算した金額四六〇万五二〇〇円のうち、従業員に支給されず春夫が受領していた次に掲げる金額
<省略>
(四) 昭和五二年分
<省略>
右の項目のうち、原告が争う2の給与所得金額は、春夫の給与収入金額三八七一万六二五〇円から給与所得控除の額四九二万一六二五円を控除した金額であるが、右収入金額の内訳は、次のとおりである。
(1) 原告昭信自工からの給与収入金額 二二五七万七六五〇円
春夫の確定申告額
(2) 原告昭信販売からの給与収入額 一六一三万八六〇〇円
右金額は、次に掲げる金額の合計額である。
ア 従業員給料の特別加算額から受領した金額 一六九万六六八〇円
原告昭信販売が給料の支給に当たり、特定の従業員に通常の給料のほかに特別加算して損金経理した金額三一六万円のうち、従業員に支給されず春夫が受領していた次に掲げる控除金額
<省略>
イ 従業員賞与の特別加算額から受領した金額 四四万一九二〇円
原告昭信販売が賞与の支給に当たり、従業員に通常の賞与のほかに特別加算した金額七九万五〇〇〇円のうち、従業員に支給されず春夫が二月一九日に受領していた四四万一九二〇円
ウ 右以外の金額 一四〇〇万円
春夫の確定申告額
(五) 以上のとおり、春夫の本件係争年分の所得税の課税標準たる総所得金額は、昭和四九年分五七四七万六八〇九円、同五〇年分四二〇〇万二〇五九円、同五一年分三三五三万四三七三円、同五二年分五七四一万一七三一円であるところ、本件処分一におけるそれは、昭和四九年分五七四七万六八〇九円、同五〇年分四二〇〇万二〇五九円、同五一年分三三五三万四三七三円、同五二年分五六七五万八八八一円であり、各年分とも右被告主張額の範囲内であるから、本件処分一のうち、更正処分は適法である。
2 本件係争年分の所得税の過少申告加算税の賦課決定処分について
前記主張の所得金額を基礎として算定される本件係争年分の所得税の過少申告加算税額は、次の表のとおりであり、本件処分一のうち、右の範囲内でなされた過少申告加算税賦課決定処分は適法である。
<省略>
四 原告・認否
1 抗弁1(一)は、(1)アないしウ及び(2)の事実を否認する。
2 抗弁1(二)は、(1)ア及び(2)の事実を否認する。
3 抗弁1(三)は、(1)ア及び(2)の事実を否認する。
4 抗弁1(四)は、(1)並びに(2)ア及びイの事実を否認する。
5 抗弁1(一)ないし(四)のその余の事実に関しては、六号事件及び七号事件の認否を引用する。
6 抗弁1(五)の主張は争う。
7 抗弁2の主張は争う。
(六号事件)
一 原告昭信自工・請求原因
1 本件処分二
(一) 原告昭信自工は、農業用機械の製造を業とする株式会社であるが、四八年二月期ないし五二年二月期の法人税について、青色申告書により別紙第二の一の1ないし5の各「確定申告」欄記載のとおり各確定申告し、また、別紙第二の一の1ないし4の各「修正申告」欄及び「再修正申告」欄記載のとおり、各修正申告したところ、被告は、原告昭信自工に対し、右各別紙の各「更正賦課決定」欄記載のとおり、各更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をし、更に別紙第二の二の1「納税告知賦課決定」欄記載のとおり、源泉徴収にかかる所得税について、納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分をした。
(二) 原告昭信自工は、別紙第二の一の1ないし5及び第二の二の1の各「異議申立て」欄記載のとおり、右各異議申立をしたが、右各別紙の「右決定」欄記載のとおり、納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分の一部分が取り消されたものの、その他については、いずれも棄却したので、更に、右各別紙の「審査請求」欄記載のとおり、各審査請求をしたが、右各別紙の「右裁決」欄記載のとおり、その一部分が取り消されたものの、その他については、いずれも棄却されて、その裁決書は、昭和五八年一二月七日、送達された。
2 本件処分二は、右各事業年度当時原告の代表取締役であつた春夫が従業員持株制度に基づいて、その保有株を従業員に対し、従業員賞与等をその代金の引当として譲り渡した事実を、被告において、その売買は、利益操作の手段として仮装されたもので、その従業員賞与等は実質的には役員賞与であると誤認し、また、従業員が直接デイーラーから購入した自動車を、原告昭信自工がデイーラーから購入してこれを従業員に売却したと誤認し、もつて原告昭信自工の従業員賞与としての損金計上を否認し、これを役員賞与として益金計上すべきであるとし、また右自動車の売却益を益金計上すべきであると認定してなされた違法な処分である。
3 よつて、原告昭信自工は、被告に対し、本件処分二のうち確定申告額、または修正申告あるいは再修正申告がなされている場合には、修正申告額あるいは再修正申告額を超える部分につき、取消しを求める。
二 被告・認否
1 請求原因1の事実は認める。
2 同2の主張は争う。
三 被告・抗弁
1 本件処分二のうち、更正処分の適法性について
(一) 四八年二月期分
<省略>
右表の加算金額である従業員賞与否認額(役員賞与)八〇〇万円の算定根拠等は、以下に述べるとおりである。
原告昭信自工は、その修正申告にかかる所得金額の計算において、昭和四八年一月二二日に、別表1に記載のとおり各従業員に対して総額一三五〇万二八一一円の賞与を支給したとしていたが、そのうち、同表の<2>ないし<5>欄に記載の合計額一一五六万二五〇〇円は、いずれも、当該各従業員に対して実際に現金で支払われたものでなく、うち<2>ないし<4>欄に記載の合計九〇〇万円は、右賞与支給日の昭和四八年一月二二日にその全額が一旦長野信用金庫須坂支店の原告昭信自工名義の別段預金(雑口座)に預け入れられた後、うち八〇〇万円が同月二四日に同信金の原告昭信自工名義の簿外の別段預金(増資口)に振り替えられ、また残額の一〇〇万円は、最終的には、他の資金九〇〇万円(その内訳は、原告の役員の春夫、山岸正実及び奥谷清一に対する原告昭信自工からの貸付金の一部八八二万五〇〇〇円並びに同族関係者二名からの預り金の返済金一七万五〇〇〇円)と併せ一〇〇〇万円として、翌二月二四日に八十二銀行須坂支店の別段預金(昭信販売株式払込金口)に預け入れられて、次表に記載のとおり、同表に記載の各人が取得した、原告昭信自工の増資新株及び原告昭信販売の設立に伴う発行株式の各払込金に充てられた。
<省略>
(注) 内書は、前所有者の山岸加公夫名義で払い込まれたものである。
したがつて、少なくとも、別表1の<3>欄に記載の八〇〇万円は、当該各従業員に対する賞与とは認められず、前記三名の役員に対し原告昭信自工から支給された賞与と認められ、これは、法人税法(以下「法」という。)三五条(役員賞与等の損金不算入)の規定により所得金額の計算上損金の額に算入できないものであるから、原告昭信自工の修正申告にかかる所得金額に右八〇〇万円を加算した。
(二) 四九年二月期分
<省略>
右表の加算金額及び減算金額の算定根拠等は、以下に述べるとおりである。
(1) 加算金額である従業員賞与否認額(役員賞与)一九八九万円について
原告は、その再修正申告にかかる所得金額の計算において、昭和四九年一月一八日及び同年二月一二日に、別表2に記載のとおり、各従業員に対して、総額三二八五万八四五〇円の賞与を支給したとしたが、そのうち同表の各<2>、<3>及び<5>欄に記載の合計額二九八八万六二五〇円はいずれも当該各従業員に対して実際に現金で支払われたものでなく、うち各<2>欄に記載の合計一九八九万円は、うち一六九〇万円が春夫の個人預金の預入資金や骨とう品及び土地購入資金に、残る二九九万円が、同じく役員の正実の原告昭信自工からの借入金の返済資金に充てられた。
その内訳は次のとおりである。
(春夫分)
<1> 太陽神戸銀行長野支店の春夫の個人預金の預入資金一一〇〇万円
<省略>
<2> 骨とう品及び土地の購入資金五九〇万円
春夫が個人資産として取得した堀真虎公の儀式用鎧冑一式及び土地の購入代金である。
(正実分)
正実分二九九万円は、同人の原告昭信自工からの借入金のうち昭和四九年一月一八日に返済された二九九万円の返済資金に充てられたものである。
したがつて、少なくとも、別表2の各<2>欄に記載の一九八九万円は当該各従業員に対する賞与とは認められず、前記二名の役員に対し原告昭信自工から支給された賞与と認められるため原告昭信自工の再修正申告にかかる所得金額に右一九八九万円を加算した。
(2) 減算金額である未納事業税認容額(未払税金)九六万円について
先に述べた前期の所得金額の増加額八〇〇万円に対する未納事業税額を次の算式により九六万円と算出し、所得金額から減算した。
<省略>
(三) 五〇年二月期分
<省略>
右表の加算金額及び減算金額の算定根拠等は、以下に述べるとおりである。
(1) 従業員給料否認額(役員賞与)五二六万五〇〇〇円について
原告昭信自工は、その修正申告に係る所得金額の計算において、当該期に各従業員に対して、通常の給料のほかに、別表3に記載のとおり、総額一四六四万円の特別の給料を支給したとしていたが、これは当該各従業員に対して実際に現金で支払われたものでなく、うち<4>欄に記載の合計五七五万九〇〇〇円の大部分が、一旦、長野中央郵便局に昭和四九年三月二九日開設された正実名義の通常貯金(以下「郵便貯金」という。)に預け入れられた上、従業員賞与の支給日等に払い出されて、次表のとおり、うち五二六万五〇〇〇円が、春夫及び正実に配分された。
<省略>
したがつて、少なくとも右各役員に配分された五二六万五〇〇〇円は、当該各従業員に対する給料とは認められず、右二名の役員に対し原告から支給された賞与と認められるため、被告は右金額を所得金額に加算した。
(2) 従業員給料否認額(使途不明金)四九万四〇〇〇円について
別表3の<4>欄の合計額五七五万九〇〇〇円から前記(1)で述べた五二六万五〇〇〇円を差し引いた残余の四九万四〇〇〇円も従業員に支給された給与とは到底認められず、その使途は明らかでなかつたため、右金額についても損金算入を否認して所得金額に加算した。
(3) 車両売却代金計上漏れ額(役員賞与)一八三万二八五一円について
原告昭信自工は、昭和四九年五月二日に分割払いで購入した乗用車二台(以下「本件車両」という。)をその購入と同時に、その従業員であつた森康宏及び木下浩一に、頭金を除く割賦代金相当額の一八三万二八五一円で売却したが、本来右従業員らから原告昭信自工が受け取るべき売却代金相当額は春夫に支払われ、原告昭信自工に入金されないことが右関係者間で当初から取り決められていた。
したがつて、右車両売却代金相当額の一八三万二八五一円については、車両売却時の昭和四九年五月二日に春夫がこれを取得することが確定し、利益を得たものと認められるため、これを車両売却代金計上漏れとして、所得金額に加算するとともに、右同額につき、春夫に対する賞与の支給があつたものとした。
(4) 減価償却費否認額(車両)六〇万二九〇九円について
原告昭信自工は、前記(3)で述べた車両についての減価償却費として六〇万二九〇九円を損金算入していたが、前記のとおり、右車両は購入と同時に売却されて、原告昭信自工が事業の用に供した期間は全くなく、右減価償却費六〇万二九〇九円の損金算入は許されないところから、所得金額に加算した。
(5) 車両認定損額(車両)二二六万八〇〇〇円について
原告昭信自工は、前記(3)で述べた車両を既に売却していたにもかかわらず、自己の車両として記帳していたので、同記帳価額相当額二二六万八〇〇〇円を所得金額から減算した。
(6) 未納事業税認容額(未払税金)二二七万一六〇〇円について
前期の所得金額の増加額一八九三万円に対する未納事業税額を次の算式により二二七万一六〇〇円と算出し、所得金額から減算した。
<省略>
(四) 五一年二月期分
<省略>
右表の加算金額及び減算金額の算定根拠等は、以下に述べるとおりである。
(1) 従業員給料否認額(役員賞与)五二六万五〇〇〇円について
原告昭信自工は、その修正申告にかかる所得金額の計算において、当該期に各従業員に対して通常の給料のほかに、別表3に記載のとおり、総額一四六四万円の特別の給料を支給したとしていたが、これは、当該各従業員に対して実際に現金で支払われたというものでなく、うち、<8>欄に記載の合計五七四万八〇〇〇円の大部分が一旦前記郵便貯金に預け入れられた上、従業員賞与の支給日等に払い出されて、次表のとおり、うち五二六万五〇〇〇円が春夫及び正実に配分された。
<省略>
したがつて、少なくとも右各役員に配分された五二六万五〇〇〇円は、当該各従業員に対する給料とは認められず、右二名の役員に対し原告昭信自工から支給された賞与と認められるため、被告は右金額を所得金額に加算した。
(2) 従業員給料否認額(使途不明金)四〇〇〇円について
別表3の<8>欄の合計額五七四万八〇〇〇円のうち四〇〇〇円については、従業員に支給された給料とは認められず、その使途が明らかでなかつたため、右金額についても損金算入を否認して所得金額に加算した。
(3) 従業員給料否認額(未払金)四七万九〇〇〇円について
別表3の<8>欄の合計額五七四万八〇〇〇円から前記(1)の五二六万五〇〇〇円及び(2)の四〇〇〇円を差し引いた四七万九〇〇〇円については、当期末現在で未払金となつていたものであるが、右金額も従業員に支給された給料とは認められないため、損金算入を否認して所得金額に加算した。
(4) 減価償却費否認額(車両)五三万一一六四円について
原告昭信自工は、前記(三)の(8)で述べた売却済みの車両の減価償却費として五三万一一六四円を損金算入していたので、被告は、これを否認して所得金額に加算した。
(5) 未納事業税認容額(未払税金)四三万八六〇〇円について
前期の所得金額の増加額三六五万五一六〇円に対する未納事業税額を次の算式により四三万八六〇〇円と算出し、所得金額から減算した。
<省略>
(五) 五二年二月期分
<省略>
<省略>
右表の加算金額及び決算金額の算定根拠等は、以下に述べるとおりである。
(1) 従業員給料否認額(役員賞与)二二四万七〇〇〇円について
原告昭信自工は、その確定申告にかかる所得金額の計算において、当該期に各従業員に対して通常の給料のほかに、別表3に記載のとおり、総額一〇九八万円の特別の給料を支給したとしていたが、これは、当該各従業員に対して実際に現金で支払われたものでなく、うち<12>欄に記載の合計四一〇万一〇〇〇円の大部分が一旦前記郵便貯金に預け入れられた上、従業員賞与の支給日等に前期の前記未払金四七万九〇〇〇円とともに払い出されて、次表のとおり、うち二二四万七〇〇〇円が春夫及び正実に配分された。
<省略>
したがつて、少なくとも右各役員に配分された二二四万七〇〇〇円は、右二名の役員に対し原告昭信自工から支給された賞与と認められるため、これを所得金額に加算した。
(2) 従業員給料否認額(使途不明金)七万九〇〇〇円について
別表3の<12>欄の合計額四一〇万一〇〇〇円のうち七万九〇〇〇円については、従業員に支給された給料とは認められず、その使途が明らかでなかつたため、右金額についても損金算入を否認して所得金額に加算した。
(3) 従業員給料否認額(郵便貯金)一四〇万六〇〇〇円について
別表3の<12>欄の合計額四一〇万一〇〇〇円のうち一四〇万六〇〇〇円については、従業員に支給された給料とは認められず、当該期末現在の郵便貯金の残高となつていたため、右金額についても損金算入を否認して所得金額に加算した。
(4) 減価償却費否認額(車両)三六万一七二二円について
原告昭信自工は、前記(三)の(3)で述べた売却済みの車両の減価償却費として三六万一七二二円を損金算入していたので、これを否認して所得金額に加算した。
(5) 前期否認未払金認容額四七万九〇〇〇円についてした前記(四)の(3)の未払金四七万九〇〇〇円は、当該期にその支払いがされていたところから、損金の額として認容し、所得金額から減算した。
なお、前記(1)の従業員給料否認額(役員賞与)二二四万七〇〇〇円のうちにも右四七万九〇〇〇円は含まれているものである。
(6) 未納事業税認容額(未払税金)七〇万〇八〇〇円について
前期分の所得金額の増加額五八四万〇五四四円に対する未納事業税額を次の算式により七〇万〇八〇〇円と算出し、所得金額から減算した。
<省略>
(六) よつて、本件処分二のうち更正処分は、いずれも、被告主張の前記各所得金額と同額ないしその範囲内のものであるから、適法である。
2 本件係争期の法人税の過少申告加算税の賦課決定処分の適法性について
前記被告主張の各所得金額を基礎として計算すると、本件係争期の法人税の過少申告加算税相当額は、次表のとおりであり、本件処分二のうち、各過少申告加算税賦課決定は、いずれも右各金額と同額ないしその範囲内であるから、適法である。
<省略>
3 本件処分二のうち、源泉所得税の納税告知処分(以下「本件納税告知処分一」という。)及び不納付加算税の賦課決定処分の適法性について
本件納税告知処分一及び不納付加算税の賦課決定処分は、以下に述べるとおり各給与等支給額を基礎として算出される各税額の範囲内であり、いずれも適法である
(一) 本件納税告知処分一について
本件納税告知処分一は、原告昭信自工が、春夫及び正実並びに従業員森康宏ら四名に支給した給与にかかる源泉所得税のうち法定納期限までに納付されなかつた税額を徴収するためにされたものである。
本件納税告知処分一にかかる給与の支給額及び源泉所得税額の明細は、別表4の「源泉所得税額等の計算明細表」のとおりであり、右別表4の<1>、<3>及び<5>欄の給与支給額すなわち源泉所得税が納付漏れとなつていた給与支給額の計算根拠は次のとおりである。
(1) 順号1及び2について
前記1の(二)の(1)で述べた春夫に支給された役員賞与一六九〇万円(昭和四九年一月一八日支給分一〇〇七万五〇〇〇円)及び正実に支給された役員賞与二九九万円
(2) 順号3について
ア <1>欄について
1の(三)の(3)で述べた春夫に支給された役員賞与
イ <5>欄について
1の(三)の(3)で述べた各車両は従業員の森康宏及び同木下浩一に対し、原告昭信自工が既にデイーラーに支払つていた頭金相当額六七万八〇〇〇円(森分二四万八〇〇〇円、木下分四三万円)を含まない割賦代金相当額で低額譲渡されていたので、同人らに経済的利益の供与(給与の支給)があつたと認めた。
(3) 順号4ないし6について
1の(三)の(1)で述べた春夫及び正実に支給された役員賞与である。
(4) 順号7ないし9について
1の(四)の(1)で述べた春夫及び正実に支給された役員賞与である。
(5) 順号10ないし14について
ア <1>欄及び<3>欄について
1の(五)の(1)で述べた春夫及び正実に支給された役員賞与である。
イ <5>欄について
1の(五)の(1)で述べた郵便貯金からの払出金のうちに、昭和五一年五月一一日付けで、原告昭信自工の従業員田中久男に対する八万円、森康宏に対する一八万八〇〇円及び川浦裕二に対する八万円、合計三四万八〇〇円の各貸付金の返済として処理されていたものがあつたところから、この分については、原告昭信自工の郵便貯金から右貸付金が返済されて、右従業員らの債務が自己の負担なしに消滅したもので、原告昭信自工から右各従業員に対し賞与の支給があつたと認めた。
なお、別表4の<8>欄の金額は、従業員に支給したとして処理されていた賞与及び給料のうちに、前記のとおり、実際は春夫らに支給した役員賞与が含まれていたことから、当該金額を控除して従業員給与の源泉所得税額を改めて計算したところ、過納分として算出された金額である。
(二) 不納付加算税の賦課決定処分について
前記(一)主張の給与等支給額を基礎として算出される不納付加算税相当額及びその算定根拠は、別表4に記載のとおりであり、本件処分二のうち、各不納付加算税賦課決定処分はいずれも適法である。
四 原告昭信自工・認否
1 抗弁1(一)の事実は、従業員賞与否認額を否認する。
ただし、一一五六万二五〇〇円が従業員に現金で支払われなかつたことは認める。
原告昭信自工の従業員の賞与に対する特別加算については、すべて株主名簿上の名義書換が行われ、書換後は配当金も支払われ、株主総会への出席も行われており、従業員持株制度は実在した。
2 抗弁1(二)の事実は、従業員賞与否認額及び未納事業税認容額を否認する。
3 抗弁1(三)ないし(五)の事実は、減価償却費否認額(車両)及び車両認定損額(車両)を認め、その余の加算金額及び減算金額を否認する。
被告が車両売却代金計上漏れと認定したのは、原告昭信自工従業員木下浩一及び森康宏の背任行為を原告昭信自工の行為と誤認したものである。
4 抗弁1(六)の主張は、争う。
5 抗弁2の主張は争う。
6 抗弁3の事実は否認し、その主張は争う。
(七号事件)
一 原告昭信販売・請求原因
1 本件処分三
(一) 原告昭信販売は、農業用機械の材料等の卸売りを業とする株式会社であるが、別紙第三の一の1ないし4の各「確定申告」欄記載のとおり、四九年二月期分ないし五一年二月期分の法人税について確定申告したところ、被告は、原告昭信販売に対し、右各別紙の各「更正賦課決定」欄記載のとおり、各更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をし、さらに別紙第三の二の1「納税告知賦課決定」欄記載のとおり、源泉徴収にかかる所得税について、納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分をした。
(二) 原告昭信販売は、別紙第三の一の1ないし4及び第三の二の1の各「異議申立て」欄記載のとおり、右各異議申立をしたが、右各別紙の「右決定」欄記載のとおり、いずれも棄却されたので、更に、右各別紙の「審査請求」欄記載のとおり、各審査請求をしたが、右各別紙の「右裁決」欄記載のとおり、その一部分が取り消されたものの、その他については、いずれも棄却されて、その裁決書は、昭和五八年一二月七日、送達された。
2 本件処分三は、右各期当時原告の代表取締役であつた春夫が保有していた原告昭信自工の株を、従業員に従業員賞与をその代金の引当として譲り渡した事実を、被告において、その売買は、利益操作の手段として仮装されたもので、その従業員賞与は実質的には役員賞与であると誤認し、従業員が横領した仕入代金を春夫が受領していると誤認し、もつて、原告の右各事実に基づく損金計上を否認し、これらを役員賞与として益金計上すべきであると認定してなされた違法な処分である。
3 よつて、原告昭信販売は、被告に対し、本件処分三のうち、確定申告額を超える部分につき、取消しを求める。
二 被告・認否
1 請求原因1の事実は認める。
2 同2の主張は争う。
三 被告・抗弁
1 本件処分三のうち、更正処分の適法性について
(一) 四九年二月期分
<省略>
右表の役員及び従業員賞与否認額五六四万五四〇〇円について
原告昭信販売が本件係争期において役員及び従業員に対する賞与の支給額として損金経理した金額は、別表5に記載のとおり「控除金額」、「税金」及び「手取金額」の三つの名目から成つていた(なお、その名目は支給日によつて必ずしも同一ではなく、「控除金額」にあつては「差引」、「積立」等と、「税金」にあつては「所得税・県市民税」等と、「手取金額」にあつては「名義料」、「支給」等とされているものもある(以下同じ。)。)
本期の「控除金額」の合計額は、別表5の順号4の<2>欄の五八一万八四〇〇円であつたが、右金額は役員及び従業員に支給されることなく、賞与支給時に春夫が受領していた。
したがつて、原告昭信販売が役員及び従業員に賞与を支給したと経理した金額のうち、少なくとも右「控除金額」は、役員及び従業員に賞与を支給したと仮装して春夫に支給された賞与である。
なお、右金額のうち、役員支給分の一部一七万二〇〇〇円については、原告が確定申告に当たつて役員賞与の損金不算入額として所得金額に加算していた。
そこで、被告は、右五八一万八四〇〇円から一七万二〇〇〇円を差し引いた五六四万六四〇〇円を法三五条(役員賞与等の損金不算入)の規定により損金算入を否認して所得金額に加算した。
(二) 五〇年二月期分
<省略>
<省略>
(1) 従業員賞与否認額四三八万五二五五円について
本期の「控除金額」の額は、別表5の順号9の<2>欄の四三八万五二五五円であつたが、右金額は、従業員に支払われることなく、従業員賞与の支給時に春夫が受領していた。
そこで、右金額の損金算入を否認して所得金額に加算した。
(2) 仕入の過大計上否認額一九三万四〇〇〇円について
原告昭信販売は、昭和四九年二月一六日付けで、韓国の亜細亜産業公社と動力噴霧機五〇〇台の購入契約を締結したが、この契約について、次表のとおり仕入金額を水増しして四八四万七五〇〇円を過大に計上していた。
<省略>
そして、右購入契約については、次のような事実が存した。
<1> 契約書が二重に作成されていたこと(売買単価が異なつているものである。)
<2> 原告昭信販売は、昭和四九年三月三〇日八十二銀行本店から外貨一万七五〇〇ドルを仮払金経理して四八四万七五〇〇円で購入し、右仮払金を右の表の「仕入計上日」欄のそれぞれの日に仕入勘定に振り替えていたこと
<3> 右外貨一万七五〇〇ドルは亜細亜産業公社には支払われていないこと(なお、右契約による支払方法はドルによることとされていた。)
<4> 右外貨は、原告昭信販売の費用等として使用されてはいないこと
<5> 原告昭信販売の経理担当の従業員は、右外貨は春夫に手渡したと申述していること
<6> 右原告の右取引の仕入伝票及び八十二銀行本店から外貨を購入したときの出金伝票の「承認印」欄には、役員山岸春夫の認印が押印されていたこと
<7> 右過大仕入相当額を木下浩一が横領したものかどうかについて、春夫を含む役員及び経理担当従業員等が協議した際に、経理担当従業員が右金員は春夫に渡したと発言したことから横領としての追求がされないこととなつたこと
以上の事実から考えると、右仕入過大相当額四八四万七五〇〇円は、仕入金額と仮装して春夫に支給された賞与とみるべきである。
なお、被告は、右金額の役員賞与の支給時期については、原告が仕入勘定に計上した日に従つて次のとおりとした。
<1> 一九三万四〇〇〇円 昭和四九年九月二〇日(本期分)
<2> 二九一万三五〇〇円 昭和五〇年三月二四日(翌期分)
そこで、被告は、右<1>の一九三万四〇〇〇円を法三五条の規定により所得金額に加算した。
(3) 未納事業税認容額六七万七五二〇円について
前期分の所得金額の増加額五六四万六四〇〇円に対する未納事業税額を次の算式により六七万七五二〇円と算出し損金の額に算入し、所得金額から減算した。
<省略>
(三) 五一年二月期分
<省略>
(1) 従業員賞与否認額二五〇万四九七九円について
本期の「控除金額」の額は、別表5の順号14の<2>欄の二五〇万四九七九円であつたが、右金額は、従業員に支払われることなく、従業員賞与の支給時に春夫が受領していた。
そこで、右金額の損金算入を否認して所得金額に加算した。
(2) 仕入の過大計上否認額二九一万三五〇〇円について
(二)の(2)で述べたとおり、原告は韓国の亜細亜産業公社からの仕入れについて、仕入金額を水増しして二九一万三五〇〇円を過大に計上していたのであるが、右仕入過大相当額二九一万三五〇〇円は、仕入金額と仮装して春夫に支給された賞与である。
したがつて、右金額を所得金額に加算したものである。
(3) 未納事業税認容額六七万六九二〇円について
前期分の所得金額の増加額五六四万一七三五円に対する未納事業税額を次の算式により六七万六九二〇円と算出し損金の額に算入し、所得金額から減算した。
<省略>
(四) 五二年二月期
<省略>
<省略>
(1) 従業員賞与否認額二四二万二五七九円について
本期の「控除金額」の額は、別表5の順号18の<2>欄の二四二万二五七九円であつたが、右金額は、従業員に支払われることなく、従業員賞与の支給時に春夫が受領していた。
したがつて、原告が従業員賞与を支給したと経理した金額のうち右「控除金額」相当額の二四二万二五七九円は、従業員に賞与を支給したと仮装して春夫に支給された賞与である。
そこで、右金額の損金算入を否認して所得金額に加算した。
(2) 未納事業税認容額五六万八九二〇円について
前期分の所得金額の増加額四七四万一五五九円に対する未納事業税額を次の算式により五六万八九二〇円と算出し損金の額に算入し、所得金額から減算した。
<省略>
(五) よつて、本件処分三のうち更正処分は、いずれも、被告主張の前記各所得金額と同額であるから、適法である。
2 本件係争期の法人税の過少申告加算税の賦課決定処分の適法性について
前記被告主張の各所得金額を基礎として計算すると、本件係争期の法人税の過少申告加算税相当額は、次表のとおりであり、本件処分三のうち、各過少申告加算税賦課決定は、いずれも右各金額と同額であるから、適法である。
<省略>
3 本件処分三のうち、源泉所得税の納税告知処分(以下「本件納税告知処分二」という。)及び不納付加算税の賦課決定処分の適法性について
本件源泉所得税の納税告知処分二及び不納付加算税の賦課決定処分は、以下に述べる根拠に基づくものであり、いずれも適法である。
(一) 本件納税告知処分二について
本件納税告知処分二は、原告昭信販売が、春夫に支給した給与にかかる源泉所得税のうち法定納期限までに納付されなかつた税額を徴収するためにされたものである。
本件納税告知処分二にかかる給与の支給額及び源泉所得税額の明細は、別表6-1及び6-2のとおりであり、右各別表の<1>欄の金額にかかる源泉所得税が納付漏れとなつていたのであるが、右給与支給額等の計算根拠は次のとおりである。
(1) 役員賞与の支給にかかるもの
1の(一)ないし(四)で述べた役員及び従業員賞与否認額並びに仕入過大否認額は、いずれも春夫に支給された役員賞与であつたが、納付漏れとなつていたので、別表6-1及び6-2の<1>欄に「(賞与)」と表示されている各「行」のとおり源泉所得税額を計算したものである。
(2) 役員報酬の支給にかかるもの
原告昭信販売が、昭和四八年四月から昭和五二年二月までの間において、従業員に毎月支給したとする給料は、「1」で述べたところの従業員賞与の場合と同様に、「控除金額」、「税金」及び「手取金額」の三つの名目から成り立つていた。
右「控除金額」の各月の金額は、別表6-1及び6-2の<1>欄の各「行」のうち、「(賞与)」と表示されているもの以外の各行のものである。
右「控除金額」については、従業員に支払われることなく、従業員給料の支給時に春夫が受領していたのである。
春夫が受領していた金額は、同人に支給した役員報酬に該当することとなるから、別表6-1及び6-2の「(賞与)」と表示されている以外の各行のとおり源泉所得税額を計算したものである。
なお、別表6-1及び6-2の「<3>過誤納の源泉所得税額」欄の金額は、原告昭信販売が役員及び従業員に支給したとしていた賞与及び給料のうちに、右に述べたとおり、実際は春夫に支給された役員賞与及び役員報酬と認められる金額が含まれていたことから、当該金額を控除して従業員給与の源泉所得税額を改めて計算し、過納分として算出された金額である。
(二) 不納付加算税の賦課決定処分について
本件処分三のうち、各不納付加算税賦課決定処分にかかる税額の算定根拠は、別表6-1及び6-2に記載のとおりであり、右各処分はいずれも適法である。
四 原告昭信販売・認否
1 抗弁1(一)の事実は、従業員賞与否認額を否認する。
原告昭信販売が、「控除金額」を、同社従業員及び役員らに現金で支払わなかつたことは認める。
2 抗弁1(二)ないし(四)の事実は、加算金額及び減算金額を否認する。
原告昭信販売が、「控除金額」を、同社従業員及び役員らに現金で支払わなかつたことは認める。
同1(二)(2)の冒頭の事実及び<1>ないし<4>及び<6>は認め、<5>及び<7>は否認する。
仕入の過大計上として否認された金額は、木下が横領したものである。
3 抗弁1(五)の主張は争う。
4 抗弁2の主張は争う。
5 抗弁3の事実は否認し、その主張は争う。
第三証拠
本件各事件における証拠関係は、本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりである。
理由
一 各事件の請求原因について
三号事件の請求原因1及び2、六号及び七号事件の各請求原因1の事実並びに本件処分一ないし三の手続の適法性については当事者間に争いがない。
二 従業員持株制度について
1 被告が、原告昭信自工の確定申告あるいは再修正申告に関し、
(一) 四八年二月期分の従業員賞与のうち八〇〇万円が役員賞与であるとして
(二) 四九年二月期の従業員賞与のうち、一九八九万円が役員賞与であるとして
(三) 五〇年二月期の従業員給与のうち、五二六万五〇〇〇円が役員賞与であり、四九万四〇〇〇円が使途不明金であるとして
(四) 五一年二月期の従業員給与のうち、五二六万五〇〇〇円が役員賞与であり、四〇〇〇円が使途不明金であり、四七万九〇〇〇円が未払金であるとして
(五) 五二年二月期の従業員給与のうち、二二四万七〇〇〇円が役員賞与であり、七万九〇〇〇円が使途不明金であり、一四〇万六〇〇〇円が郵便貯金であるとして、
各損金算入をいずれも否認し、
原告昭信販売の確定申告に関し
(六) 四九年二月期の役員及び従業員賞与のうち、五六四万六四〇〇円の
(七) 五〇年二月期の従業員賞与について、四三八万五二五五円の
(八) 五一年二月期の従業員賞与について、二五〇万四九七九円の
(九) 五二年二月期の従業員賞与について、二四二万二五七九円の
各損金算入をいずれも否認し、
(一〇) 原告昭信販売の給与支給額のうち、別表6-1及び6-2の各<1>欄に「(賞与)」と表示されているもの以外の各行の金額について、従業員に対する給与の支払を否定して、春夫に対する役員報酬と認定したのに対し、
原告らは、原告両社は、従業員持株制度を採用しており、右従業員賞与等は、これらを引当として従業員らに株式を取得させる方法により従業員らに支給されたものである旨主張する。
2 そこでまず、原告らの主張する従業員持株制度について検討する。
(一) 乙第一号証の一ないし二八、第五号証の一、一三、第一八、第二三及び第二四号証の各一、二、第二五号証、第二六号証の一、二、第二七号証の一ないし八六、第二八号証の一ないし四四、第二九号証の一ないし四四、証人森、同田中、同大日方の各証言と弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができ、この認定を覆すに足りる証拠はない。
(1) 前記1で損金算入を否認された金額は、従業員らに手交されていなかつたこと
(2) 特別加算を受けた者は、前記1の金額について、株式を取得するか、あるいは現金の交付を受けるかを選択することができなかつたこと
(3) 特別加算が行われた期間中、譲渡されたとされる株式一株あたりの金額は、前記1(一)の場合は一〇万円で、その後は六万五〇〇〇円から一五万円と一定していないが、株式額面五〇〇〇円を大幅に上回るものであり、特別加算を受けた従業員は、退職する際に、取得したとされる株式を額面額で原告昭信自工に譲渡する旨誓約させられた者もおり、実際にも、退職する際、額面額で清算した者がいること
(4) 春夫が、特別加算を受ける者と加算金額を決めたが、そこには役職地位在職年数などの客観的な基準はなく、特別加算を受けた者は、両社の従業員のうちごく一部の者であること(原告昭信自工の従業員総数は八九人ないし一三六人であり、そのうち賞与の場合は一五ないし二一名、給与の場合は八名に特別加算した。原告昭信販売の従業員は八名で、いずれも、原告昭信自工と兼務し、その全員に特別加算(控除)した。)
(5) 特別加算は秘密裏に行われ、特別加算を受けた従業員も原告の主張する従業員持株制度について原告両社から説明を受けたことはないこと
(6) 別表1ないし3及び5のとおり、四八年二月期から五二年二月期までは、特別加算の内訳に「税金等負担額」あるいは「税金」及び「名義料」あるいは「税金・手取額」という名目のものがあり、これらは実際に右各表記載の各従業員に支給され、税金等負担額は、特別加算により増加する所得税及び住民税を補てんする目的で概算で少し多めに算定されたものであること
(7) 原告昭信自工の株式について株券は発行されていたが、原告らの主張する従業員持株制度により株式を取得したとされた者に対して株券あるいは株券預かり証は交付されなかつたこと
(8) 賞与の場合、特別加算の額は、別表1及び2のとおり、本来の賞与に比べ極めて高額であること
(9) 春夫所有の原告昭信自工の三六六株もの株式が控除金額の控除をされた原告昭信販売の従業員らに株主名簿上譲渡されたのは、本件処分一ないし三に先立ち関東信越国税局の職員によつて調査が開始された同年一〇月上旬よりも後であること
以上の事実によれば、原告らの主張する従業員持株制度は、原告両社の従業員に対し賞与等を支給する名目により損金を計上して原告両社の利益を隠廠するための方策であるというべきであつて、実際に損金として使用されているとは認められないものであるから、前記1の金額の損金計上は否認されるべきである。
(二) これに対し、原告らは、原告両社には真に従業員持株制度が存在し、株主名簿の名義書換が行われており、株式の持主たる従業員は株主総会に出席し、配当も受けていた旨主張し、この主張に副う証言等もある。
しかし、前記(一)(1)ないし(3)の事実によれば、原告両社の行つた特別加算が損金を過大に計上する方策であつたことは否めないものというべきであり、仮に右原告らの主張事実が認められたとしても、それらの事実は、前記(一)(1)ないし(3)の事実認定と抵触するものではなく、したがつて、従業員持株制度を仮装するもの、あるいはこれを秘密裏に行うための口止め料の意味を持つものとも評価し得るものであり、また、株主名簿の名義書換は、従業員持株制度を仮装するためにも必要な行為であるから、これらをもつて真に従業員持株制度が存在したということはできない。
また、森及び木下らが、自らの利得を図るために、春夫の指示を歪めて、特別加算を行つたと認めるに足りる証拠はない。
3 前記1項に掲げた金員の使途等に関して
(一) 原告昭信自工の関係
甲第一一号証の四、乙第一号証の一ないし二八、第二号証の一、二、第三、第四号証、第五号証の一ないし二〇、第六号証の一ないし六、第七号証の一ないし四、第八号証の一ないし四、第一〇号証の一ないし五、第一一号証の一、二、第二八号証の一〇、第三〇号証、証人森、同木下の各証言と弁論の全趣旨(原告らが自白し、あるいは実質的に争つていない事実)によれば、次の事実を認めることができ、この認定に反する証拠はない。
(1) 前項1(二)の金員のうち、一六九〇万円は、春夫が太陽神戸銀行長野支店の預金、骨董品及び土地購入代金に充てられ、二九九万円は、各従業員に対する特別加算の賞与の支給日とされている昭和四九年一月一八日に正実の原告昭信自工からの借入金返済に充てられたこと
(2) 前項1(三)ないし(五)の金員は、一旦正実名義の郵便貯金に預け入れられた後、次のとおり役員への配分等のため払い出されたこと
前項1(三)の金員は、六号事件抗弁1(三)(1)の表のとおり、春夫に対し二八六万五〇〇〇円、正実に対し二四〇万円が各払い出され、残額四九万四〇〇〇円は使途が不明であること
前項1(四)の金員は、六号事件抗弁1(四)(1)の表のとおり、春夫に対し二八六万五〇〇〇円、正実に対し二四〇万円が各払い出され、残額四〇〇〇円は使途が不明であり、四七万九〇〇〇円は原告昭信自工の翌事業年度に費用として支出されたこと
前項1(五)の金員は、六号事件抗弁1(五)(1)の表のとおり、春夫に対し二二四万七〇〇〇円、正実に対し一八九万七〇〇〇円が払い出され、残額七万九〇〇〇円は使途が不明であり、一四〇万六〇〇〇円は郵便貯金に預けられたままであつたこと
(二) 原告昭信販売の関係
(1) 乙第一号証の一、三、二六、第七号証の一ないし四、及び証人森、同坂詰の各証言によれば、前記1(六)ないし(一〇)の金員は、森が各従業員の賞与及び給与から控除した現金をその都度春夫に渡していたことが認められ、この認定を覆すに足りる証拠はない。
(2) 原告らは、森らが右現金を横領した旨主張するが、これを認めるに足りる証拠はなく、次の事実に照らしても、春夫が受領していたと認めるべきである。
乙第三三号証及び弁論の全趣旨によれば、原告昭信販売の各従業員の給与から控除金額を控除する方式は、昭和五二年四月をもつて廃止されたのであるが、同月から右各従業員の給与の支給額は従前の給料月額に比べて約三〇パーセント減額し、原告昭信販売設立以来無報酬であつた春夫に、同年五月から月額一〇〇万円の役員報酬の支給が開始されたこと及び右事実を春夫自身が国税不服審判所に対し答述していることが認められ、この認定に反する証拠はない。
三 本件車両の売却代金計上漏れについて
1 乙第一三及び第一四号証の各一、二、第一五号証、第一六ないし第一八号証の各一、二ないし第一八号証、証人木下、同森の各証言によれば、次の事実が認められ、この認定を覆すに足りる証拠はない。
(一) 本件車両の購入時の注文書上の買受人は、原告昭信自工であり、車両の登録名義人も原告昭信自工であつて、本件車両は原告昭信自工の資産台帳にも車両運搬具として計上されていたこと
(二) 本件車両の代金は、合計二二六万八〇〇〇円であり、割賦支払の方法が採られたが、その支払はすべて原告昭信自工が行い、頭金総額六七万八〇〇〇円(コロナ二四万八〇〇〇円、セドリツク四三万円)は購入時に小切手で支払い、割賦元金及び手数料(以下「割賦金」という。)合計一八三万二八五一円については、原告昭信自工が手形を掘り出したこと
(三) 本件車両は、一台は長野日産株式会社から、一台は長野トヨペツト株式会社から購入したものであるが、いずれも昭和四九年五月二日に購入したものであること
(四) 本件車両は、購入された当初から木下がセドリツクを、森がコロナを各使用及び管理していたものであり、ガソリン代、車検費用及び修理代は木下らが負担していたこと
(五) 木下らは、毎月の給料のうちから右割賦金相当額を、給料日の都度、木下が森に対し自己分の現金を渡し、森が自己分の現金と合わせて春夫に対し直接手渡しする方法で交付していたが、右金額は原告昭信自工には入金されていないこと
以上の事実によれば、木下、森及び春夫は、木下及び森が個人で車両を購入する場合に比較して、原告昭信自工が本件車両の減価償却の損金処理を行い、春夫が割賦金相当額を利得し、木下及び森が低廉な額による車両を取得することでそれぞれが利得することを意図していたものと推認することができる。
2 これに対し、原告らは、森及び木下が横領した旨主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。
3 前記1の事実によれば、前記三者の事前の了解のもとに、本件車両は、これらを原告昭信自工が取得した直後に、割賦金相当額で木下と森に対し各売り渡されたものであり、木下と森はそれぞれの頭金相当額を減額されて譲渡されたのであるから、右各金額の経済的利益の供与を受けたというべきであり、また春夫は、購入当時から割賦金相当額を利得することが決められていたと言うべきであるから右同額の役員賞与を受けたというべきである。
四 仕入の過大計上について
1 次の事実は当事者間に争いがない。
(一) 原告昭信販売は、昭和四九年二月一六日付で、韓国の亜細亜産業公社と動力噴霧機五〇〇〇台の購入契約を締結したが、この契約に関し、仕入金額につき、仕入計上日昭和四九年九月二〇日分として一九三万四〇〇〇円が、同昭和五〇年三月二四日分として二九一万三五〇〇円が水増しされて過大に計上されていたこと
(二) 売買単価が異なる契約書が二重に作成されていたこと
(三) 原告昭信販売は、昭和四九年三月三〇日に八十二銀行本店で外貨一万七五〇〇ドルを仮払金経理して四八四万七五〇〇円で交換し、右仮払金を右各仕入計上日に仕入勘定に振り替えていたこと
(四) 前記外貨一万七五〇〇ドルは亜細亜産業公社に対し支払われていないこと
(五) 前記外貨は、原告昭信販売の費用等として使用されてはいないこと
2 乙第六号証の一、二、第一二号証の一、第一九号証の一、二、第二六号証の一、証人田中、同森、同木下の各証言によれば、次の事実が認められ、この認定に反する証拠はない。
(一) 原告昭信販売は、前項の契約締結の交渉のため役員らが四、五回訪韓したが、それは春夫、木下、川浦裕二、田中久夫であり、木下が一人で訪韓したことはなく、契約締結のときは春夫も訪韓していること
(二) 原告昭信販売の経理担当の従業員である森が、前記邦貨と外貨を交換し、社長室で前記外貨を春夫に直接手渡していること
(三) 右金員を木下が横領したものかどうかについて春夫を含む役員等が協議した際には、森が右金員は春夫に渡した旨発言したことから、木下に対し横領としての追及がなされないことになつたこと
(四) 春夫は、原処分時、仕入の過大計上の事実を認める申述書を提出しており、右過大計上相当額は、春夫の個人資産である松林禅寺建築のためのフイリピンからの木材購入資金等に充てられたこと
3 前記1及び2の事実によれば、前記1の仕入過大計上相当額合計四八四万七五〇〇円は、仕入金と仮装して春夫に支給された賞与とみるべきである。
右仕入が過大に計上されたのは、昭和四九年九月二〇日に一九三万四〇〇〇円、昭和五〇年三月二四日に二九一万三五〇〇円であると認められる(原告らが明らかに争わない。)。
五 三号事件の抗弁について
1 昭和四九年分について
(一) 抗弁1(一)(1)ア(従業員賞与の特別加算分)は、前記二記載のとおり、一六九〇万円である。
(二) 同イ(従業員給与の特別加算分)は、前記二記載のとおり、二四六万五〇〇〇円である。
(三) 同ウ(車両売却代金相当額の利得額)前記三記載のとおり、一八三万二八五一円である。
(四) 同エ(春夫の確定申告額一〇五〇万七七八〇円)は、原告らが明らかに争わないから、これを自白したものとみなす。
以上を合計すると、春夫の昭和四九年分の原告昭信自工からの給与収入金額は三一七〇万五六三一円である。
(五) 抗弁1(一)(2)ア(従業員給与の特別加算分)は、前記二記載のとおり、六三五万一九四〇円である。
(六) 同イ(従業員賞与の特別加算分)は、前記二記載のとおり、六五四万六九五五円である。
(七) 同ウ(仕入過大計上額から受領した金額)は、前記四記載のとおり、一九三万四〇〇〇円である。
以上を合計すると、春夫の昭和四九年分の原告昭信販売からの給与収入金額は一四八三万二八九五円である。
(八) 以上を合計すると、昭和四九年分の春夫の給与収入金額は四六五三万八五二六円であると認めることができ、これから給与所得控除額四二一万七六九七円(原告らが明らかに争わない。)を控除した四二三二万〇八二九円が同年分の春夫の給与所得金額である。
そうすると、抗弁1(一)の表のとおり(原告らは給与所得金額欄を除いて明らかに争わない。)、春夫の昭和四九年分の所得税額を認めることができる。
2 昭和五〇年分について
(一) 抗弁1(二)(1)ア(従業員給与の特別加算分)は、前記二記載のとおり、一三六一万一六〇〇円である。
(二) 同イ(春夫の確定申告額一〇九四万六六〇〇円)は、原告らが明らかに争わないから、これを自白したものとみなす。
以上を合計すると、春夫の昭和五〇年分の原告昭信自工からの給与収入金額は一三六一万一六〇〇円である。
(三) 抗弁1(二)(2)ア(従業員給与の特別加算分)は、前記二記載のとおり、六二九万一八四〇円である。
(四) 同イ(従業員賞与の特別加算分)は、前記二の記載のとおり、四二二万七九五七円である。
以上を合計すると、春夫の昭和五〇年分の原告昭信販売からの給与収入金額は一三四三万三二九九円である。
(五) 同ウ(仕入過大計上額から受領した金額)は、前記四記載のとおり、二九一万三五〇〇円である。
(六) 以上を合計すると、昭和五〇年分の春夫の給与収入金額は二七〇四万四八九九円であると認めることができ、これから給与所得控除額三七五万四四九〇円(原告らが明らかに争わない。)を控除した二三二九万〇四〇九円が同年分の春夫の給与所得金額である。
そうすると、抗弁1(二)の表のとおり(原告らは給与所得金額欄を除いて明らかに争わない。)、春夫の昭和五〇年分所得税額を認めることができる。
3 昭和五一年分について
(一) 抗弁1(三)(1)ア(従業員給与の特別加算分)は、前記二記載のとおり、七五万円である。
(二) 同イ(春夫の確定申告額一五一九万六六〇〇円)は、原告らが明らかに争わないから、これを自白したものとみなす。
以上を合計すると、春夫の昭和五一年分の原告昭信自工からの給与収入金額は一五九四万六六〇〇円である。
(三) 抗弁1(三)(2)ア(従業員給与の特別加算分)は、前記二記載のとおり、六二〇万九四四〇円である。
(四) 同イ(従業員賞与の特別加算分)前記二記載のとおり、二五〇万四九七九円である。
(五) 以上を合計すると、春夫の昭和五一年分の原告昭信販売からの給与収入金額は八七一万四四一九円である。
以上を合計すると、昭和五一年分の春夫の給与収入金額は二四六六万一〇一九円であると認めることができ、これから給与所得控除額三五一万六一〇二円(原告らが明らかに争わない。)を控除した二一一四万四九一七円が同年分の春夫の給与所得金額である。
そうすると、抗弁1(三)の表のとおり(原告らは給与所得金額欄を除いて明らかに争わない。)、春夫の昭和五一年分の所得税額を認めることができる。
4 昭和五二年分について
(一) 抗弁1(四)(1)(春夫の確定申告額二二五七万七六五〇円)は、原告らが明らかに争わないから、これを自白したものとみなす。
(二) 抗弁1(四)(2)ア(従業員給与の特別加算分)は、前記二記載のとおり、一六九万六六八〇円である。
(三) 同イ(従業員賞与の特別加算分)前記二記載のとおり、四四万一九二〇円である。
(四) 同ウ(春夫の確定申告額)は、原告らが明らかに争わないから、これを自白したものとみなす。
以上を合計すると、昭和五二年分の春夫の原告昭信販売からの給与収入金額は一六一三万八六〇〇円である。
(五) 以上を合計すると、昭和五二年分の春夫の給与収入金額は三八七一万六二五〇円であると認めることができ、これから給与所得控除額四九二万一六二五円(原告らが明らかに争わない。)を控除した三三七九万四六二五円が同年分の春夫の給与所得金額である。
そうすると、抗弁1(四)の表のとおり(原告らは給与所得金額欄を除いて明らかに争わない。)、春夫の昭和五二年分の所得税額を認めることができる。
5 春夫の本件係争年分の総所得金額は、以上認定したとおり(被告主張額)であり、本件更正処分一におけるそれは右金額と同額あるいはその範囲内であるから、本件更正処分一のうち、更正処分は適法である。
6 前項の所得金額を基礎として算定される本件係争年分の所得税の過少申告加算税は、抗弁2記載の表のとおりであり、本件更正処分処分一のうち、右の範囲内でなされた過少申告加算税賦課決定処分は適法である。
六 六号事件の抗弁について
1 四八年二月期分について
抗弁1(一)(従業員賞与否認額)は、前記二記載のとおり、八〇〇万円であり、修正申告による所得金額(八一八七万八一七七円)については当事者間に争いがない。
以上を合計すると抗弁1一の表のとおり、四八年二月期の原告昭信自工の所得金額は、八九八七万八一七七円である。
2 四九年二月期分について
(一) 抗弁1(二)(1)(従業員賞与否認額)は、前記二記載のとおり、一九八九万円である。
(二) 抗弁1(二)(2)(未納付事業税認容額九六万円)
前期の所得金額の増加は、前記認定のとおりであり、所得金額が増加した場合に被告主張のとおり減算することについて、原告昭信販売は明らかに争つていない。
再修正申告による所得金額(二億三五九五万二〇〇二円)については当事者間に争いがない。
(三) 以上を計算すると、抗弁1(二)の表のとおり、四九年二月期の原告昭信自工の所得金額は、二億五四八八万二〇〇二円である。
3 五〇年二月期分について
(一) 抗弁1(三)(1)(従業員給料否認額・役員賞与)は、前記二記載のとおり、五二六万五〇〇〇円である。
(二) 抗弁1(三)(2)(従業員給料否認額・使途不明金)は、前記二記載のとおり、四九万四〇〇〇円である。
(三) 抗弁1(三)(3)(車両売却代金計上漏れ額)は、前記三記載のとおり、一八三万二八五一円である。
(四) 抗弁1(三)(4)(減価償却否認額・車両六〇万二九〇九円)及び(5)(車両認定損額二二六万八〇〇〇円)の事実は当事者間に争いがない。
(五) 抗弁1(三)(6)(未納付事業税認容額二二七万一六〇〇円)前期の所得金額の増加は、前記認定のとおりであり、所得金額が増加した場合に被告主張のとおり減算することについて、原告昭信販売は明らかに争つていない。
(六) 以上を計算すると、五〇年二月期の原告昭信自工の所得金額は三億八四五七万六三四九円である。
4 五一年二月期分について
(一) 抗弁1(四)(1)(従業員給料否認額・役員賞与)は、前記二記載のとおり、五二六万五〇〇〇円である。
(二) 抗弁1(四)(2)(従業員給料否認額・使途不明金)は、前記二記載のとおり、四〇〇〇円である。
(三) 抗弁1(四)(3)(従業員給料否認額・未払金)は、前記二記載のとおり、四七万九〇〇〇円である。
(四) 抗弁1(四)(4)(減価償却否認額・車両五三万一一六四円)の事実は当事者間に争いがない。
(五) 抗弁1(四)(5)(未納付事業税認容額四三万八六〇〇円)
前期の所得金額の増加額に対する事業税の減算額であり、所得金額の増加は、前記認定のとおりであり、所得金額が増加した場合に被告主張のとおり減算することについては、原告昭信販売は、明らかに争つていない。
(六) 以上を計算すると、抗弁1(四)の表のとおり、五一年二月期の原告昭信自工の所得金額は、一億九七二九万一〇二三円である。
5 五二年二月期について
(一) 抗弁1(五)(1)(従業員給料否認額・役員賞与)は、前記二記載のとおり、二二四万七〇〇〇円である。
(二) 抗弁1(五)(2)(従業員給料否認額・使途不明金)は、前記二記載のとおり、七万九〇〇〇円である。
(三) 抗弁1(五)(3)(従業員給与・郵便貯金)は、前記二記載のとおり、一四〇万六〇〇〇円である。
(四) 抗弁1(五)(4)の事実は当事者間に争いがない。
(五) 抗弁1(五)(5)(前期未払金認容額)は、前記二記載のとおり、四七万九〇〇〇円である。
(六) 抗弁1(五)(6)(未納付事業税認容額七〇万〇八〇〇円)
前期の所得金額の増加は、前記認定のとおりであり、所得金額が増加した場合に被告主張のとおり減算することについて、原告昭信自工は明らかに争つていない。
(七) 以上を計算すると、抗弁1(五)の表のとおり、五二年二月期の原告昭信自工の所得金額は、五億三一一四万七六六二円である。
6 原告昭信自工の本件係争期分の総所得金額は、以上認定したとおり(被告主張額)であり、本件処分二におけるそれは右金額と同額あるいはその範囲内であるから、本件処分二のうち、更正処分は適法である。
7 前項の所得金額を基礎として算定される本件係争期分の所得税の過少申告加算税は、抗弁2記載の表のとおりであり、本件処分二のうち、右の範囲内でなされた過少申告加算税賦課決定処分は適法である。
8 抗弁3について
(一) 本件納税告知処分一について
(1) 抗弁3(一)(1)、同(2)<1>欄、(3)及び(5)アは、前記二記載のとおりであり、同一(1)<5>欄については、前記三(本件車両)のとおりである。
(2) 抗弁3(一)(5)イの事実は、前記二の事実、乙第一号証の一、六、第二号証の一、二、第六号証の一、一二、第八号証の一ないし四、第九号証の一、二、第一〇号証の一ないし五、第一一号証の一、二、第三二号証と弁論の全趣旨により認めることができ、右事実は、原告昭信自工から従業員に対し賞与の支給がなされたというべきである。
(二) 不納付加算税賦課決定処分について
前記一の給与等支給額を基礎として算定される不納付加算税相当額及びその算定根拠は、別表4記載のとおりであり、本件処分二のうち、各不納付加算税賦課決定処分はいずれも適法である。
七 七号事件の抗弁について
1 四九年二月期分について
抗弁1(一)(役員及び従業員賞与否認額)は、前記二記載のとおり、五六四万六四〇〇円であり、確定申告による所得金額(八二二万六四〇九円)については当事者間に争いがなく、以上を合計すると、原告昭信販売の四九年二月期の所得金額は、一三八七万二八〇九円である。
2 五〇年二月期分について
(一) 抗弁1(二)(1)(従業員賞与否認額)は、前記二記載のとおり、四三八万五二五五円である。
(二) 抗弁1(二)(2)(仕入の過大計上否認額)は、前記四記載のとおり、一九三万四〇〇〇円である。
(三) 抗弁1(二)(3)(未納付事業税認容額六七万七五二〇円)
前期の所得金額の増加は、前記認定のとおりであり、所得金額が増加した場合に被告主張のとおり減算することについて、原告昭信販売は明らかに争つていない。
(四) 確定申告による所得金額(二四〇五万九八二四円)については当事者間に争いがなく、以上を計算すると、五〇年二月期の原告昭信販売の所得金額は二九七〇万一五五九円である。
3 五一年二月期分について
(一) 抗弁1(三)(1)(従業員賞与否認額)は、前記二記載のとおり、二五〇万四九七九円である。
(二) 抗弁1(三)(2)(仕入の過大計上否認額)は、前記四記載のとおり、二九一万三五〇〇円である。
(三) 抗弁1(三)(3)(未納付事業税認容額六七万六九二〇円)
前期の所得金額の増加は、前記認定のとおりであり、所得金額が増加した場合に被告主張のとおり減算することについて、原告昭信販売は明らかに争つていない。
(四) 確定申告による所得金額(四二一万六二六〇円)については当事者間に争いがなく、以上を計算すると、五一年二月期の原告昭信販売の所得金額は八九五万七八一九円である。
4 五二年二月期分について
(一) 抗弁1(四)(1)(従業員賞与否認額)は、前記二記載のとおり、二四二万二五七九円である。
(二) 抗弁1(四)(2)(未納付事業税認容額五六万八九二〇円)
前期の所得金額の増加は、前記認定のとおりであり、所得金額が増加した場合に被告主張のとおり減算することについて、原告昭信販売は、明らかに争つていない。
(三) 確定申告による所得金額(一二二五万五一九五円)については当事者間に争いがなく、以上を計算すると、五二年二月期の原告昭信販売の所得金額は一四一〇万八八五四円である。
5 原告昭信販売の本件係争期分の総所得金額は、以上認定したとおり(被告主張額)であり、本件更正処分三におけるそれは右金額と同額あるいはその範囲内であるから、本件更正処分三のうち、更正処分は適法である。
6 前項の所得金額を基礎として算定される本件係争期分の所得税の過少申告加算税は、抗弁2記載の表のとおりであり、本件更正処分三のうち、右の範囲内でなされた過少申告加算税賦課決定処分は適法である。
7 抗弁3について
(一) 本件納税告知処分二について
(1) 前記二において認定したとおり、原告昭信販売にかかる役員及び従業員賞与否認額並びに仕入過大計上の否認額は、いずれも春夫に支給された役員賞与であると認定すべきであるから、右各金額につき、源泉徴収すべきであるところ、原告昭信販売はこれを納付しなかつた(弁論の全趣旨)のであり、その金額は、別表6-1及び6-2の<1>欄に「(賞与)」と記載されている各行のとおりである。
(2) 前記二において認定したとおり、原告昭信販売に係る従業員給料の控除金額は、いずれも春夫に支給された役員報酬に該当すると認定すべきであるから、右各金額につき、源泉徴収すべきであるところ、原告昭信販売はこれを納付しなかつた(弁論の全趣旨)のであり、その金額は、別表6-1及び6-2の<1>欄に「(賞与)」と記載されているもの以外の各行のとおりである。
(3) したがつて、本件納税通知処分二は適法である。
(二) 不納付加算税賦課決定処分について
前記一の給与等支給額を基礎として算出される不納付加算税相当額及びその算定根拠は別表6-1及び6-2記載のとおりであり、本件処分三のうち、各不納付加算税賦課決定処分はいずれも適法である。
八 以上検討したところによれば、原告らが取消しを求める本件処分一ないし三はいずれも適法であり、したがつて、原告らの請求は、いずれも理由がないからこれらを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九三条を各適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 山崎健二 裁判官辻次郎及び同原道子は、転補のため、署名捺印することができない。裁判長裁判官 山崎健二)
別紙第一
一 昭和四九年分
<省略>
二 昭和五〇年分
<省略>
三 昭和五一年分
<省略>
四 昭和五二年分
<省略>
別紙第二
一 法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分
1 自昭和四七年三月一日至昭和四八年二月二八日事業年度分
<省略>
2 自昭和四八年三月一日至昭和四九年二月二八日事業年度分
<省略>
3 自昭和四九年三月一日至昭和五〇年二月二八日事業年度分
<省略>
4 自昭和五〇年三月一日至昭和五一年二月二〇日事業年度分
<省略>
5 自昭和五一年二月二一日至昭和五二年二月二〇日事業年度分
<省略>
二 源泉所得税の納税の告知処分及び不納付加算税賦課決定処分
1 総括表
<省略>
2 各年月分の明細は次のとおりである。
<省略>
<省略>
別紙第三
一 法人税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分
1 自昭和四八年三月一日至昭和四九年二月二八日事業年度分
<省略>
2 自昭和四九年三月一日至昭和五〇年二月二八日事業年度分
<省略>
3 自昭和五〇年三月一日至昭和五一年二月二〇日事業年度分
<省略>
4 自昭和五一年二月二一日至昭和五二年二月二〇日事業年度分
<省略>
二 源泉所得税の納税の告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分
1 総括表
<省略>
2 各年月分の明細は次のとおりである。
<省略>
<省略>
<省略>
別表1
昭和48年2月期の各人別従業員賞与として原告が計上していた金額の内訳
<省略>
(注) 税金等負担額は、<2>、<3>およびら<4>の欄の合計金額の25パーセント又は30パーセントである。
ただし、市川正志及び秋元孝之は、<3>欄の金額の25パーセントである。
別表2
昭和49年2月期の各人別従業員賞与として原告が計上していた金額の内訳
<省略>
(注)1 金額欄は加算額のある者だけを記載した。
2 株式分は1株当たり65,000円、額面分は1株当たり5,000円で計算している。
別表3
特別加算給料の月別内訳表(50年2月期、51年2月期、52年2月期)
<省略>
別表4
源泉所得税額等の計算明細表
<省略>
別表5
特別支給等の給料及び賞与の支給明細表
<省略>
別表6-1
源泉所得税額等の計算明細表
<省略>
別表6-2
源泉所得税額等の計算明細表
<省略>